西表島シーカヤック(6)

バイミ崎へ
バイミ崎へ

11月10日:晴時々曇 東の風3~6m/sec 波高2~3m
 この日はバイミ崎を回って南風見田の浜まで30Km強を漕ぐことになります。ふなうき荘の主人に2009年10月にシーカヤックの遭難があって1人行方不明のままとか、宿の客で2度出かけたが2度ともバイミ崎を回れず帰ってきたとか、途中の廃村跡には不審者が住みついているから気をつけろとか、さんざん脅かされていたので内心不安でした。船浮を出てサバ崎、崎山湾を横切るまでは快調で、ダイビングの船も来ているぐらいだから天気もくずれないだろう、このまま行けば昼過ぎにはなどと思っていたのですが。

 「岬は荒れる」のセオリーどおり少し荒い波の立つバイミ崎をまわりました。問題はこの後でした。とんと舟が進まなくなり、漕いでも景色がなかなか変わらなくなったのです。前方にかすんで見えるウビラ石の突端も近づきません。初めは「海坊主につかまった」などと冗談を言っていたのですが、いくら漕いでも越されないウビラ石あたりでは眉が吊り上っていました。漕ぎ続けであまりにしんどいので、手を止めるとたちまち逆戻りし、その距離を取り返すのに30分かかるという有様。間近に見えるベーブ石まで1時間半、落水崎までさらに1時間半かかり、バイミ崎からここまでのわずか4Kmほどに5時間かかっていました。どこか浜に上げて休みたかったのですが、海岸線は白波が砕けていてそれも許されません。この岬を回ることの難しさと危うさはこんなところにもあります。結局、この日は鹿川湾口を横切りに南風見田浜まで漕ぐしかありませんでした。最後に暗くなりかけたリーフで横波を3回受け、沈ははしなかったものの、デッキに積んでいたザックを持っていかれてしまいました。浜に上がって、からからの喉に水を流し込み、ふなうき荘の奥さんがにぎってくれたおにぎりをペコペコの腹にためると、正体もなく眠り込んでしまいました。長い旅にはこんな日もあるようです