5月13日~14日:鳩待峠は明るくなってから出発しました。雪は少なく、尾瀬の山ノ鼻まで滑るという期待は見事にはずれ、スキーをかついで大半を歩きました。それでも尾瀬ケ原の端っこ辺りからスキー歩行。咲きはじめた水芭蕉や広がる雪原を眺めながら猫又川沿いに歩みを進めていきました。柳平を過ぎ、左俣から尾根にとりつき、県境の尾根を目指します。台風の去ったあとの青空の下、長い行程を急ぐ理由は何もありません。それでも白沢山に立ったときには、まだあれを登るのかと思うくらい遠くに平ヶ岳の頂がありました。こんなときは何も考えないことです。ひたすらスキーを運び、無心の内になだらかで広い頂に立つと、4日前に登った越後駒がはるか向こうからエールを送ってくれました。3時間近くかかった登りも滑るとわずか20分ほど。スキーの威力と快感は捨てられません。白沢岳の登り返しから再びシールを着けて帰り道を急ぎましたが、行動13時間で打切りツェルトを張りました。
翌朝、1920mのピークを越え、ジャンクションの平らなコブからスズケ峰へと回りました。登路にとった尾根が、滑るにはあまり面白くなさそうだったからです。登るときに目星をつけていたフタマタ沢の一本南、名も知らない枝沢を滑ることにしました。50m強の急登を終えてスズケ峰に立つと、今日も陽ざしが降りそそぎ立ち去りがたい思いにとらわれました。のろのろとした動作でシールをとって最後の滑降に入ります。目的の沢の源頭にあたるコルまでは尾根一本で迷いようもありません。問題は、地図に現れない植生の濃さと沢中の雪割れでした。尾根の木々は密でなく、コルからの無木立の斜面は快適でした。沢では1カ所滝が現れましたが、右岸の分厚い雪の斜面でクリア。もう一カ所落ちてはならない雪割れの上の急斜面も慎重に滑って無事に昨日のトレースへと戻りました。
山ノ鼻に戻るとハイカー姿の人が多く来ていました。雪解けを迎えた尾瀬はこれから大勢の観光客を迎えることでしょう。
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